松村堂

気になることは、気にとめる事にしました。

カードローンの異常な膨張に国も危機感を抱く

 

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僕は、若かりし頃クレジットカードを沢山所持する事がステータスだと思っていました。特に銀行系のカードです。さらにゴールドなんて色が付くものなら「どんなもんじゃい!」みたいな・・・。今思うと浅はかを絵にかいたような人間でした。当時は、バブルが弾ける前で所得が有ろうが、無かろうがじゃんじゃん融資してくれる時代でした。おかげで後々大変な思いをした記憶があります。そこで今回は、時代が違うものの似た様な傾向になってきた銀行系カードローにスポットを当ててみました。

 

個人融資に力を入れる銀行に監視強める金融庁

金融庁が銀行カードローンへの監視を強めているそうです。9月20日には、三菱東京UFJ、三井住友、みずほの3メガバンクに対して立ち入り検査があったそうです。銀行カードローンの急速な伸びに対応して、すでにメガバンクや地方銀行などに幅広く、立ち入り検査を行うと発表していたそうですが、あらかじめ宣言して立ち入り検査に入るというのも異例のことだそうです。

 

 

キャッシュカード感覚で借金してしまう

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銀行系カードローンは銀行の窓口や無人契約機などで簡単に手続きができ、無担保で使い道自由な恐ろしいカードです。残高は増え続けており、2017年6月末時点の残高は5兆6793億円。前年同月比に比べて8.6%の増加、5年間で1.6倍に膨らんでいるそうです。簡単な手続きでカードが発行され、一度作ってしまうと銀行やコンビニのATMなどで簡単に現金が引き出せるために、キャッシュカードの感覚で借金してしまう恐怖のカードなのです。そして今回、金融庁がメガバンクへ検査に入った目的は利用者保護の浸透であり、過度な広告宣伝や融資獲得が行員の評価基準になっていないかなどがチェック項目とされているようです。

 

 

当然カードローンの審査基準が厳しくなる

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銀行の業者団体である「全国銀行協会(以下、全銀協)」も、カードローンの審査基準を厳しくすることを加盟行に要請。多重債務者の発生を防ぐよう各銀行に要請しているそうです。さらに全銀協では、加盟行のカードローンの融資残高を集めて、毎月公表していくそうです。これまでは、日本銀行が各行から報告をまとめて3カ月ごとに公表していますが、この10月にも全銀協が都市銀行、地方銀行、第二地方銀行といったカテゴリー別に公表することになっているそうです。

三井住友銀行

4月から源泉徴収票など収入証明書の提出基準を、
融資額300万円以上から50万円以上に変更。

みずほ銀行

融資額の限度額を年収の3分の1以下に引き下げる。

三菱東京UFJ銀行

融資額の限度額を年収の3分の1以下に引き下げる。

 

 

即日融資も無くなる方向

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金融庁の動きに呼応する形で、これまで銀行のカードローンが売りとしてきた「即日融資」も、この10月以降から消えていくようです。来年以降、警察のデータベースへの照会を実施するために、早くて翌営業日、遅ければ2週間程度かかるといわれています。また、暴力団などの反社会的勢力との関係を断つのも狙いのようです。全銀協が窓口になって警察回線と結び、審査を厳格化することになり、少なくとも、2018年以降は現在のように簡単に銀行のカードローンをつくることができないことになるようです。

 

 

とにかく便利なカードローン

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銀行カードローンは一度申し込んでカードを受け取ってしまえば、銀行やコンビニのATMから1000円単位で簡単に借金ができてしまう。時間外にATMでおカネを引き出しても、時間外手数料を100円負担するだけで、24時間いつでも好きなだけ借りれてしまいます。最初は、限度額10万~20万円程度でも、問題(延滞)なく使い続けていると、いつの間にか限度額が引き上がる仕組みも恐ろしい・・・。

 

 

上限引き上げの審査はない

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実際に、銀行によっては20万円からスタートしても、最大200万円程度にまで限度額が上がる銀行もあるそうです。中には1000万円の限度額が設定された人もいるそうです。その間、収入の審査があるわけでもなく、銀行からの一方的な通知によって限度額が引き上げられる仕組みになっているようでした。

しかも、返済は融資金額に応じて毎月1万~3万円程度の定額返済で済むために、あっという間に限度額いっぱいの借り入れになってしまいます。金利は年2~15%未満と幅広いようですが、融資金額が200万円以下であれば年10~11%台。100万円借りていれば、年間10万円以上の金利を支払うことになります。それでも返済時の金額が低い為、あまり気にならず結局、気が付くと数十万円、数百万円の借金ができてしまう事になります。

 

 

再び増えてきた多重債務者

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個人向けローンといえば、多重債務問題が社会現象となった歴史があり、2010年に施行された「改正貸金業法」によって、消費者金融に対しては融資金額の上限を「年収の3分の1以下」と定められました。その後、個人の自己破産件数はずっと減少したそうですが、2016年になって13年ぶりに増加。その要因がどうやら銀行系カードローンだと考えられています。というのも、銀行は「改正貸金業法」の施行後も「年収の2分の1」まで融資が可能で、過剰債務を抱えやすい仕組みを残していたのでした。今や消費者金融の貸付残高は、銀行の半分以下に減少しているのです。

 

 

カードローンが収入源になった理由

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銀行にとって、カードローンが貴重な収入源になってしまった背景には、やはりアベノミクスの影響が大でしょう。銀行の貴重な収入源だった「国債」の利ザヤが縮小し、企業への融資も潤沢な内部留保を背景に振るわないのが原因のようです。これが全国に64行ある地方銀行になるともっと深刻になります。国債運用による収益が減少し、カードローンによる収益にも厳しい審査が入れば、残るは法人融資などになります。当然内部留保をたっぷり抱える法人は借金などしたがりません。

アベノミクスの推進によって、銀行は個人向け消費者ローン事業やアパートなどの不動産ローン融資に注力するしか、利益を出していく方法がなくなってしまったわけです。一方、カードローン破綻者が増えれば、銀行の経営を圧迫することになります。そして地方銀行や第二地方銀行の中には、経営危機を迎えるところが出てくるかもしれません。

 

 

最後に

銀行にとって苦しいところかもしれませんが、カードローンのこれ以上の膨張は、後々日本経済に悪影響を及ぼしかねません。これまで個人向けローンといえば消費者金融会社が主流だったわけですが、その座はいつのまにか銀行に明け渡されたようです。かつて、「サラ金地獄」と呼ばれた多重債務問題が、今度は「銀行ローン地獄」に変化しつつあります。お金を借りるというのは、様々な事情から仕方なく借りる人もいたり、何も考えず借りる人もいます。どちらの借金も追われるという精神的プレッシャーが付いて回るので、これからは、借り入れをする場合なるべく無理のない借り入れを心がけたいと思います。