松村堂

気になることは、気にとめる事にしました。

ランチバイキングで元がとれない理由

 

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最近は、外食をしても食べ放題とか、飲み放題なんてコースを選ぶ事は、まずありません。もちろん食欲が、落ちたのもあるでしょうが、そこまで量を求めなくなったのは、事実です・・・。それにそんなコースを選んでしまうと心の片隅で「もったいない」とか「元を取りたい」という気持ちを持ってしまいます。たとえば、ランチバイキングなんかは、まさに典型例です。もし注文したら「同じおカネを払ったのだから少しでもたくさん食べなきゃ損だ」と考えるのは自然なことですしどちらかといえば、それあり気菜要素の方が強いと思います。ところがランチバイキングではまずほとんどの場合、元を取ることはできないということを知っている人は何人いるでしょうか・・・。

 

 

なぜ食べ放題が好まれるのか

ランチバイキングというのは、回転寿司同様多くの人に人気があります。その理由の一つ目は、決まった料金で好きなだけ食べられるというお得感。二つ目は好きな物が好きなだけ食べられるという満足感。三つ目は、いろいろ種類がたくさんあるので楽しめる、豊富感といったところにあるのではないでしょうか・・・。確かに目の前にごちそうが並んでいると、あれもこれも食べたくなるという気持ちに誰もがなります。たとえば、料金が2000円だったら、絶対2000円以上食べて元をとってやろうという気持ちになります。その結果、お腹が一杯なのについ無理して食べ過ぎてしまうということは、よくあることです・・・。

 

 

損をする商売は無い

しかしながら、そこは商売です。当然、自分のところが儲からないような価格設定にはしていません。たとえば、わかりやすいのが「ドリンクバー」です。通常、ファミリーレストランなどではドリンクバーはだいたい200~300円ぐらいの価格ですが、原価はせいぜい5円~15円程度だと言われています。これで元を取ろうと思ったら20杯も30杯も飲まなければならない訳です・・・。これはどう考えても無理な話です。ランチバイキングの場合は、これに加えていくら大食いの人がたくさん食べても絶対に元は取れない構造になっているのです。そもそも飲食店のコスト構造は、固定費と変動費から成り立っています。店を開けたことで、お客さんが1人もこなくてもかかるのが固定費いわゆる家賃や光熱費等、それと来た人数分に比例してかかるのが変動費(食材費等)です。したがってお客が1人も来なければ固定費分がまるまる赤字です。お客が1人来れば(1人当たりの料金-変動費)だけ赤字が減ります。したがってたくさん来れば来るほど、儲けは多くなるという仕組みです。

 

 

定食屋さん VS ランチバイキング

たとえば、ある食堂で普通の定食の値段が1000円だとします。変動費を300円だとすると、このお店では1人のお客が来るたびに700円の利益(固定費含まず)が出るわけです。もしこのお店の固定費が10万円だとすると、150人以上お客が来れば700円×150人=10万5000円ですから、固定費を入れても利益が出ることになります。一方、このお店がランチバイキングを設定し、値段が2000円で食べ放題とすればどうなるでしょうか。仮に来たお客が3人前食べたとしても変動費は300円×3=900円ですから、このお客から上がる利益は1100円となり、むしろ400円増えます。つまりお客は「頑張って3人分食べてやったぞ!」と思っていても、店も普通の定食以上にがっちり儲かっているという訳です。また、別のコスト要因も考えてみましょう。

料理というものは1人前作ろうが、100人前作ろうが、投入する食材の量が増えるだけで手間が100倍かかるわけではありません。それに料理を盛り付けて、一人一人の客席まで運ばなくてもいいわけですから、調理や接客にかかる人件費は減ります。さらに、どれぐらい注文が入るのかわからない一品メニューに比べたら、バイキングスタイルの場合は、店側で用意していればいいわけですから、食材自体の仕入れコストも安くすることができるのです。この考え方は、コーヒーチェーン店のS・M・L・LLのサイズでも同じことが言えるでしょう。よく大きいサイズの方が分量当たりの価格が安いからお得だと言って大きなサイズを注文する人がいますが、これもさきほどのコスト構造と同じでサイズが大きい方が店の利益も大きくなります。むしろ飲めなくて残すぐらいなら、最初から小さいサイズを選ぶのが賢明なのです。

 

 

元を取りたい気持ちがさらなる損を招く

食べ盛りの子供はともかく、ある程度の年齢の大人であれば食べ過ぎるということはリスクが高く正直体に良いことがありません・・・。食べ過ぎてその日1日気分が悪かったり、場合によっては次の日まで胃がもたれてしまったりします。あげくの果てには翌日の体重計の数字に大きなショックを受けている事でしょう・・・。なのでこのように元を取りたいという気持ちが、結局のところ大きな損を呼び込んでしまうということになりかねません。因みに経済学ではこのようにすでに使ってしまっていて、戻ってこないお金のことをサンクコスト(埋没費用)と言うそうです。この場合のランチバイキングの料金がそれにあたります。サンクコストにこだわり過ぎると損をしてしまうということになりがちなのです。本来、サンクコストはもう戻ってこないおカネですから、考えても仕方が無いですけどね・・・。

 

 

最後に

もちろん、ランチバイキングが「悪」という訳では、ありません。あくまでも損得だけで考えた場合の事です。それになにより、自分の食べたいものが満足の行くように食べられるのであればそれで満足度も高いはずです。要するに、何が何でも元を取りたいと思って無理する必要はないということです。そして、すでに使ってしまったお金のことはなるべく考えないようにしましょう。なぜなら使ったお金はもう帰ってきませんからね・・・。