松村堂

気になることは、気にとめる事にしました。

世界から見て意外と働いてない日本人

 

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昨日は、台風が関西地方に直撃しました。それにしても今年はやたら自然災害が多く感じます。幸い今年のお盆休み期間は、それなりに好い天気に恵まれたような気がします。お盆といえば、どこの企業も年々お盆休みというか夏休みというか、休む期間が長期化しているような感じです。企業側からしてみれば、普段からの残業時間の帳尻合わせなのか、はたまた会社の働き方改革の影響なのか、とにかくガッツリ休んで貰っているみたいですね・・・。中には1週間以上の休暇を取っているサラリーマンもいるようです。僕の勤め先である関連会社も10日くらい休んでいるところもありました・・・。しかし、本当にこれでいいのでしょうか?実は、こうした休日の増加傾向に警鐘を鳴らす専門家の人たちが結構いるようです。

 

働き方改革をきっかけに変化する日本企業

世間では、働き方改革の号令のもと、残業を削減する動きが進んでいます。会社や部署によっては残業ゼロを実現しているところもあるようです。前述のように社員に夏休みをまとめて取らせる企業も増えてきています。因みに会社員を対象にしたある調査によると、今年の夏休みは「5連休」が最も多いそうです。一説には、天皇陛下の譲位と重なる来年のゴールデンウィークは10連休になるとか、ならないとからしいですよ・・・。2020年の東京五輪期間中もまとまった連休にするといった話も囁かれているようです。

一方では、厚生労働省の中央最低賃金審議会は、最低賃金を全国平均で26円引き上げるよう決めたそうです。時給で示すいまの方式に変わった2002年以降、最大の引き上げ幅だそうです。労働時間が減って休暇が増え、なおかつ賃金が上がるとしたら働く者にとっては喜ばしいことです。しかし中小企業の経営者は、そんなふうに思っていないようです。実際に経営が順調でない企業など、これではもたないという声も聞かれています。はたして本当にこんな楽天的考えで大丈夫でしょうか・・・。

 平成14年度~平成28年度地域別最低賃金

 

日本の国民一人あたりGDP(国内総生産)は1993年にはOECD加盟国のなかで6位でしたが、1990年代後半に急落し、その後は17位~20位あたりで推移しているのです。また、2015年における時間あたりの労働生産性は、主要7か国の中で日本が最も低く、アメリカ、フランス、ドイツのほぼ3分の2に留まっているのです。このように日本はGDPや労働生産性にしても、国際競争力にしても昔と違って世界に誇れるような地位にはないと考えるべきでしょう。むしろ低迷しているというのが正しい評価かもしれません。そんな中でインプット(労働投入量)を減らせば、当然アウトプット(生産量)は下がる。このままだと、日本の経済力も国際競争力もいっそう低下すると考えるのが自然でしょう。

 

国をあげて生産性向上に取り組む諸外国

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したがって、このジレンマから逃れるためには労働時間を減らしても成果があがるようにすること、すなわち労働生産性の劇的な改善が必要になってくるのです。そこで注目したいのが、生産性向上の模範国ともいえるのがドイツだそうです。正社員の年間総労働時間が日本の4分の3程度と短く、なおかつ一人あたりの名目GDPが日本より高いドイツでは、生産性向上のためにAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を活用したインダストリー4.0に国をあげて取り組んでいるのです。企業はコストに見合った利益があがる仕事に特化するなど、徹底した合理化を進めています。それに高度技術社会に適応した人材供給のシステムも備わっています。ドイツでは年齢が低い段階から職業教育が行われ、高等教育機関も総合大学のほかに知識の応用や実務を重視する専門大学が多いそうです。そして企業は職種を限定して社員を採用し、人材紹介会社やヘッドハンティングによる中途採用も盛んに行われているそうです。

インダストリー4.0は、ドイツ政府が主導し、産官学共同で進めている国家プロジェクトです。人類史上4回目の産業革命、つまり「第4次産業革命」を起こす取り組みとしており、そのコンセプトは「スマートファクトリー」(考える工場)です。2000年代半ばぐらいから考えられてきたもので、2011年に発表したので、すでに取り組みを開始して5年目になるそうです。 

 

管理職の生産性向上を考える

それに対して日本では、いまだ目立った改革は実行されていないのが現状のようです。とくに改革が遅れているのは非製造業、そしてオフィスなど間接部門だそうです。日本生産性本部が行った産業別生産性の分析によると、わが国は化学、機械などの産業ではアメリカの水準を上回っているようですが、販売・小売、飲食・宿泊などのサービス産業ではアメリカの3割か4割程度の水準にとどまっているのです。原因としてIT化の遅れに加えて、過剰なサービスや、コンビニやファストフード店などコストに見合わない長時間営業も原因と考えられます。また、しばしば指摘されるようにホワイトカラーの仕事にムダが多く、生産性向上の足を引っぱっているのが現状です。

たとえば、何時まで経っても意思決定は複雑で時間がかかるうえ、会議が長く参加者も多い・・・。会議のための資料づくりなども考慮に入れると、それに費やすコストは膨大なのです。オフィスなどにおけるITの導入も、欧米などに比べ日本は以外にも遅れているようです。また製品にしてもサービスにしても、過剰なまでの完璧主義がコストの削減を妨げているのも事実でしょう。キャリア形成に面では、ゼネラリスト育成の名の下に大学の専門とは無関係に社員を採用し、数年でローテーションを行う方式も、高度専門化社会においては大きなハンディとなっているようです・・・。

 

ホワイトカラー(White-collar、白い襟のこと。 色を意味するcolorではない)とは、一般には頭脳労働をする人、もしくは背広・ネクタイ姿で仕事をする人(総合職)のことを言う。 対義語には肉体労働者を指すブルーカラーが挙げられ、関連語にはサラリーマンが挙げられます。海外ドラマの「ホワイトカラー」も凄く面白いですよ。

 

システムの改革は不可欠

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日本の大企業や伝統的な企業では中間管理職の比率が高く、組織の階層数も多いのです。いっときグループ制の導入や組織のフラット化(階層の削減)が図られましたが、思ったほど浸透しなかったようです。それどころか、いろいろな理由をつけて元に戻す動きもあるくらいでした。その影響で、現場や第一線で働く人たちへの権限委譲も進んでいないのが現状です。それに、あいかわらず集団主義で個人の仕事の分担や権限・責任が不明確です。そのため仕事の効率化や成果向上のモチベーションが生まれにくいし、テレワークや副業容認の障害にもなっています。

 

最後に

いまだに存在する終身雇用を前提にした雇用制度の限界。周知のようにアメリカや中国などでは、情報・ソフト系企業を中心に転職や独立・起業が普通に行われていて、それが経済の発展と社会の活力の源泉となっています。日本でも最近は若年層を中心に転職や独立に対する抵抗感が薄れています。問題は転職や独立を後押ししたり、それが不利にならないような社会的システムの構築が遅れている事なのです。法律や税、社会保障などの制度改革は急務でしょう・・・。働き方改革は、労働時間を減らし休暇を増やすことばかりに目がいきがちですが、それを可能にするためにも、生産性向上への本格的な取り組みが絶対的に必要な気がします。