怒りっぽい人が孤立する理由
人生さえも左右する怒りのメカニズム
怒る側と怒られた側、大きな意識の違いがある
怒りっぽいことで、どんな損をこうむるのか。ある調査機関の調べによりますと「怒ったとき、怒られたときの感情はどれくらい持続するか」というアンケートを出した結果次のような回答がありました。怒ったほうは「数分程度」と答えた人が一番多いのに対し、怒られたほうは「1年以上」と答えた人が圧倒的でした。また、パワハラに該当するかどうかは、怒られたほうの「5割以上」がそうだと答え、怒ったほうは、「2割弱」しか気にしていないという調査結果でした。「人間関係が回復したましたか」という質問には、怒られたほうは5割弱が「全く回復していない」、怒ったほうは5割弱が「だいぶ回復した」と感じているようです。自分はすでに忘れているのに、怒った相手はずっとうらみ続けていて、パワハラだと感じているとしたら、決して笑い事では済まされないのです。この意識の違いをイメージしながら考えていきましょう。
正論を言ったことで遠方へ異動
組織においては、人間関係の軋轢(あつれき)が生まれるのはやむをえないことです。しかし上司の乱暴な物言いに、部下の生意気な態度に、取引先からの理不尽な要求に、日々ストレスを募らせている人は少なくないでしょう。そうしたストレスはイライラの源泉となり、やがて愚痴や怒りとなって放出されるのです。そして、このサイクルが短ければ、「怒りっぽい人」とのレッテルを貼られてしまうのです。では、組織の中で「怒りっぽい人」は具体的にどのような不利益を被るのか。「怒りっぽい人」や「すぐに感情的になってしまう人」は、昇進しづらいということなのです。
「べき論」を強く持っている人が多い
今も昔も、怒りっぽい人は何事に対しても、こうあるべきだという「べき論」を強く持っている人が多いと思います。そういう人は、たいてい他の人の話を聞き入れようとしません。しかしながら管理職になってチームをまとめる立場になれば、さまざまな意見を聞いて調整しなければならない。上にいけばいくほど、これが重要になりのです。改めることなく「べき論」を振りかざす人はマネジメント能力が欠けているとみなされ、昇進の機会も与えられないという悲劇が待ち受ける事になりかねません。現代社会ではせっかく実力があっても、上司に煙たがられたらおしまいなのです。
それ以来、昇進はストップ
最近では、上司が部下に対して癇癪(かんしゃく)を起こしたり怒鳴りつけたりするとは、「パワーハラスメント」と言われる恐れもあります。昔は「あの部長、怒りっぽい」で済んでいたことが、会社全体の問題にまで発展することもあるのです。極端な例ですが、あるメーカーの拠点長は、とにかく部下の抗弁を聞かない人でした。ミスをしたときには皆の前で一方的に大声で問いただし、言い訳は一切認めない。耐えられなくなった部下たちが一致団結して、出社をボイコットしました。彼は拠点長の役職を解かれ、それ以来、昇進はストップ。本人は、自分がそこまで部下たちを追い詰めていたとは全く気づいていなかったという話です。この手の問題は、表面化する段階ではたいてい手遅れになりがちなのも特徴です。また関係修復も容易ではありません。
最後に
確かに怒りっぽいと、社内のコミュニケーションにも問題が生じます。しかし、誰かに苦言を呈さなければならないときもあると思うのです。そういったときには人に対して怒るのではなく、問題自体を解決することにエネルギーを使う事が望ましいと思います。部下を怒鳴って問題解決すれば苦労はしません。イライラは、人間関係の構築を阻み、ビジネスパーソンとしての信頼を失います。人と人とのいい関係を築けるよう努力し続ける事が将来の明暗を大きく左右するでしょう。
参考資料:幻冬舎・東洋経済新報社