松村堂

気になることは、気にとめる事にしました。

日本の理不尽な縦社会を実感

 

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 職場で経験する出来事で、時に理不尽さを感じることもあるでしょう。特に組織で働く人ならば誰もが一度や二度、上司から理不尽な要求をつきつけられる経験をしていると思います。どう考えても指示として間違っているものや、時には犯罪すれすれで社外にバレたら大変な事になるなど、数え上げればきりがありません。しかし、そんな無茶苦茶な上司の要求も、マジメな組織人であればあるほど、後ろめたい仕事や、どう考えてもアウトな不正行為も組織で働く人達には「あるある」なのかもしれませんね…。

 

外国人から見る日本の上司像

 昨年行われたある統計に理想の上司についての調査というのがありました。その中の「直属の上司はどのような人ですか?」という質問に対してなんと約半数の43%が「理不尽な上司」と回答したそうです。 また、外国人に対しての調査でも1000人を対象に上司への不満について質問したところ、日本人上司は外国人上司と比べて2倍不満があるという声が多かったそうです。他の内容で言えば、やり方の導入などの変化を嫌がる傾向や、新しいアイデアとか意見を受け入れてくれないという数々の不満率が高かったそうです。また仕事の範囲を明確に指示してくれないというのも多かったそうです。極端な解釈をすれば、世界から見ても日本の上司像というのは、仕事の範囲などの的確な指導が明確ではないくせに、部下に対しては理不尽な要求を一方的にしてくるという、なんとも身勝手な存在なのです。

 

理不尽な上司の存在

 では、なぜ日本の上司は部下に対してこうも理不尽な存在になってしまうのでしょうか?専門家曰く、上司が部下に理不尽な要求を押しつけることは、その上司が「上」からきた理不尽な要求を跳ね返すことができなかったからだと指摘します。では、なぜ跳ね返すことができなかったかというと、単純に我が身が可愛いからだけの理由だそうです。たとえば、自分が感じたままに「そんな理不尽なことはできません!」などと組織に抵抗すれば、出世の道が絶たれるだけではなく、組織人として積み上げたキャリアまでもが消滅してしまうからです。当然、そうなると家族持ちであれば、住宅ローンや子どもの学費など不安が頭によぎり、ついつい「部下に押し付けてしまおう…。」と「下」への負の連鎖が始まるのです。

要するに、日本の上司が部下に理不尽なことを要求するのは、理不尽な組織の中で自分が難を逃れるために弱い立場の人間を犠牲にする、という自己保身のなにものでもないのです。もちろんこんなことを書くと異論、反論もあるかと思います。それでもやはりダメな上司というのは簡単に解決できる物事でもわざわざ複雑にしつつ自分で処理できる程度に仕事を増やし「上司は、上司なりに大変なんだ!」と意見交換もせず、「下」のものを突き放すのです。なので恐らく同じように思っている部下の人達は、沢山いると思います。そしてそんな部下の人たちが次にとる行動がその会社に愛想を尽かす行動即ち「転職」なのです。

 

職場で求めるやりがいと充実

 世界を対象としたある調査で、日本の労働者は「勤務先への満足度」が調査対象国中で最下位でした。更に「管理職になりたい」という回答も最下位だったそうです。ならば、そうなると日本人の労働者はさして好きでもない職場にしがみついて、なんのために働いているのでしょうか?それはズバリ収入です。これは普遍的なところで他国でも同じようです。その次に「職場の人間関係が良いこと」と「休み易いこと」という諸外国の労働者が気にもかけていないことを日本人だけが重視しているそうです。因みに海外の場合、職場の上位になっているのは「自分のやりたい仕事であること」、「自分の能力や個性が生かせること」、「仕事とプライベートのバランスがとれること」だそうです。つまりは、我々日本人にとって働くということは、出世やキャリアアップでもやり甲斐でもなく、「金」と「人間関係」と「有給休暇」ということになります。なんかイヤな感じ…。

 

安定が大好きな日本人

 1989年~2018年に新卒社会人になった1000人に対して、ある調査機関でアンケートを取ったところ「安定した大手の企業とこれから成長しそうな新しい企業、どちらで働きたいと考えていますか?」と質問をしたところ7割近くが「安定した大手」と回答したそうです。政治家や公務員をボロクソにSNSなんかで叩いている人たちも、実際に就職する時に「公務員」を候補から外さないことが多いそうです。要するに大多数の日本人にとって働くということは、「安定した組織にしがみつく」こととほぼ同義なのかもしれませんね。そんな「社畜社会」ともいうべき日本社会のなかで、管理職になったらどのような行動に走るか考えてみましょう。

仮に「金」「人間関係」「有給休暇」という安定したポジションを定年までキープすることが目的となっている組織人の行動原則が、「組織に逆らわない」ことがマストアイテムになることは言うまでもないでしょう。もしそこで理不尽な命令が例え「上」から流れてきたとしても、面倒に巻き込まれぬようサッサと自分よりも弱い立場の者へ押し付けるのが、ごく自然な行動パターンになるのでしょう。まさにこれこそが部下に対しての理不尽な要求をするメカニズムといえます。

 

閉鎖的な組織の特徴

 そしてこの流れがさらに強硬で陰湿になってしまうのが、新卒から定年退職まで過ごす生え抜きの社員が多い閉鎖的な組織です。上司には絶対に逆らえない。どんなに理不尽な命令であっても、どんなに社会の一般常識から逸脱された不法行為であっても、上司が「ヤレ」と命じたことを跳ね返すことはできない。もしそれをやったら出世コースから外れるどころか、地方に飛ばされるなど陰湿な嫌がらせが待っているからかもしれません…。普通「どうしても嫌なら嫌と言えばいいのに…。」と思うところでしょうが、その世界に住む人達にとっては「逆らう=死」というほどの恐怖の対象なのかもしれませんね…。

 

パワハラ上司の温床

 世界の人たちから見ると日本人労働者は、最後まで組織に残るという考えを持つ人が多いと思われているようです。またそれに輪をかけて組織への帰属意識が強いのが、国家公務員でしょう。因みに2017年の雇用動向調査によると、一般労働者の離職率は11.6%、パートタイム労働者は25.7%でしたが、人事院の公務員離職率を見ると全職員で6.3%しかないそうです。従ってこのような組織にしがみつく人が多い世界は、どうしても自己保身から理不尽な命令に屈服する者が多くなるのかもしれません。そしてその歪からか、心を病んでいる国家公務員もかなり多いそうです。

 

解決の糸口

 考えるにこれからは「終身雇用」という仕組みにさっさと見切りをつけて、組織にしがみつかない働き方を当たり前になるようにしていくことが望ましいのではないでしょうか。終身雇用は日本の強みであるとか、終身雇用のおかげで日本は経済大国になれたと、組織に長くしがみつくことを当たり前のように自己正当化してきたとするならば、その不思議な社会主義的なシステムのせいで、諸外国の中でも突出して労働者の満足度が低くなり、とんでもないパワハラや中年労働者の自殺があったと考えられます。従って終身雇用が崩壊すれば、自然とパワハラ上司は減っていくはずです。能力のない高圧的な上司の理不尽な命令に従う理由もなければ、不正な行為だと内部告発すればいいし、いよいよ気に入らなければ、さっさと辞表を提出して、まともな上司のいる組織に移ってもいいでしょう。とにかくこれからは組織よりも自分のキャリアを優先するようにするのです。わざわざパワハラに付き合う必要なんてこれっぽっちもないのですから…。

 

最後に

 今の日本は少子高齢化まっしぐらです。人口が減少していく中で、貴重な労働力をひとつの組織に縛り付けて、年功序列の世界で定年まで遊ばせているなんて、社会にとっても大きな損失です。そんな不合理なことを続けていれば、必ずどこかで誰かが無理をしなくてはいけなくなるのです。とにかく働くことは自分の為であるということです。パワハラの被害者を生む、「組織のために働く」という呪縛からそろそろ解き放たれる時ではないでしょうか…。