松村堂

気になることは、気にとめる事にしました。

キレるがエスカレートする人は病気の可能性あり

 

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今日は、さすがの京都も真夏日一歩手前といった感じです。暖かいを通り越して「暑い」です。それでもこれからバイクに乗られる人やレジャーにスポーツを楽しまれる人にも最高の季節ですね。さて四月も後半に入りゴールデンウィークを目前にした新入社員たちも仕事に慣れ始め自分の立ち位置がぼちぼち分かってきたと思います。そこで今回は、決して人事ではない。組織での部下と上司について考えてみたいと思います。少し前になりますが、滋賀県彦根市の滋賀県警彦根署河瀬駅前交番で、19歳の男性巡査が、同僚の41歳の巡査部長を拳銃で撃って殺害した事件がありました。殺人容疑で逮捕された巡査は、「罵倒されたので撃った」と各メディアで報道されていました。そもそも、「罵倒された」というのは加害者側の主張であり、死亡した巡査部長が本当に罵倒したのかどうかについては、確認のしようがないのが実際のところでしょう。そんな衝動というか挙動のメカニズムを調べてみました。

 

簡単にスイッチが入る「間欠爆発症」

世の中には怒りや攻撃衝動を制御できない衝動制御障害という問題を抱えている人が少なからずとも存在します。「これくらいのことであんなに怒るなんて」という人は,まず「間欠爆発症」を疑ってかかる必要性があると考えられます。専門医師によると間欠爆発症は、怒りや攻撃衝動を制御できない衝動制御障害の一種であり、かんしゃく発作、激しい口論や喧嘩、他人への暴力、モノへの八つ当たりによる破壊などを繰り返すそうです。こうした爆発は、きっかけとなるストレスや心理社会的誘因と釣り合わないほど激しさが増すといいます。しかも、厄介な事に衝動的で計画性がないのが問題なのです。些細な揉め事でも周囲が驚くほど過剰反応するのが、間欠爆発症の人なのです。軽口や冗談などの悪意のない言葉でも、爆発のスイッチが簡単に入るので、周囲は、その都度困惑する事になります。

 

 

事件性の高い間欠爆発症とは

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間欠爆発症の人が傷害事件や殺人事件を起こす危険性は、一般の人よりも高いと考えられています。間欠爆発症と思われる事件の多くが思い込みというか、被害妄想からの過剰反応が原因だとされています。間欠爆発症の人の多くは自覚がなく、自分から精神科を受診することは殆どないそうです。たいていの場合は、警察沙汰になってはじめて精神科医の診察を受け、その結果、間欠爆発症と判明するそうです。

 

 

パワーハラスメントが頻繁に取り沙汰される時代

さらに現代では、間欠爆発症に限らず、過剰反応する若者が最近増えているそうです。そのため、指導する立場の上司や先輩が困惑することも少なくありません。たとえば、新入社員がミスを連発しても、強く叱れないとか、遅刻癖のある社員にも。正当な理由のない遅刻でも注意すると、「言い方がキツイパワハラです!」と言われます。いくら指導するつもりで注意しても、今の社会では、そのことについて非難されると、それ以上何も言えなくなってしまうのが現状のようです。酷いケースでは、上司の上司にパワハラ被害を相談したりし、上司は人事部から呼び出されて、事情説明をする羽目になる事もあるのです。自分がパワハラの被害者であるかのように装って、悪意のある過剰反応をするのです。このように被害者のふりをして、叱責や非難をかわそうとする社員を作らないようにする事が会社にとって急務でしょう・・・。

 

 

怒られた経験の少ない人に潜む危険性

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たとえば、わからないことがあって当たり前な新入社員。上司にも先輩にも一切質問せず、自己判断で仕事を進めてしまう。そうなると必然的に、トラブルが発生し、取引先からクレームが来るようになります。上司がわからないことがあったら、必ず聞きなさい。と注意しても、相変わらず質問せず、自己判断で進めることをやめません。そして、ついに多額の損失が出、当然取引先にも迷惑がかかりました。会社として取引先に謝罪、しかしながら当の本人は反省するどころか、「こんな小さな取引をするために会社に入ったわけではありません。もっと大きな仕事をさせてください」と上司に直訴しました。呆れた上司が「お前、自分が何をやったか、わかっているのか」と怒鳴ったところ、新入社員は「僕は、親にも教師にも怒られたことがないんです」と答え、翌日から出勤しなくなりました。後日、「適応障害のため、休養加療を要する」という趣旨の診断書が送付されてきて、数カ月間休職。その間、新入社員は、怒鳴った上司のパワハラではないかと社内の相談室に相談を持ちかける。パワハラではない事は、立証できましたが、上司は、自分が怒鳴った理由や新入社員が損失を出した経緯を会社に説明するという時間とエネルギーを費やす事になります。このようなタイプの人は、心理学でいうところの「オーバークレーミング」というそうです。自分は何でも知っていると思いたがる。いわゆる知ったかぶりですね・・・。

 

 

自己愛過剰がもたらす社会への弊害

この手の新入社員も最近増えているようです。企業側からすると、どう対応すればいいのかわからないし、正直注意するのが怖い・・・。という事になります。心理学者によると、その背景にあるのは、「自己愛過剰社会」とも呼べるほどナルシシズムが蔓延している今の日本に問題があるそうです。その一因に自尊心の過度の重視だそうです。もちろん、自尊心は大切ですが、自尊心の重要性が強調されすぎた結果、勘違いした親や教師が増えていると考えられます。心理学者によると、ほめれば、ほめるほど、能力が伸び、成績が上がると思い込んでいる。なかには、わが子に「お前は特別だ」と言い、望むものを与えれば、自尊心を高められると思い込んでいる親もいるようですが、残念ながらそれはナルシシズムに火をつけるだけだそうです。子どもを甘やかし、ほめそやす風潮に拍車をかけているのが少子化でもあるといいます。まるで王子様や王女様のように子どもを大事に育て、自尊心を傷つけてはいけないとの配慮から、叱らない親が多いと考えられるのです。一方、教師の多くは、目に余る言動があれば生徒に注意すべきだと思ってはいるものの、なかなか叱れない。へたに叱ると、親に怒鳴り込まれかねないと思うからでしょう・・・。

 

 

最後に

要するに、親が叱らないだけでなく、教師も叱りたくても叱れないのが現在の日本の教育の現状が、少々のことは許されると思い込み、自分の過ちは決して認めない子どもが増えていると考えられます。こういう子どもが成長して新入社員として入ってくるわけですから、上司や先輩としては、自尊心を傷つけないように配慮する必要があるのです。勝手に「できる」と勘違いしているのは新入社員のほうなのに、なぜ指導する立場の自分が配慮しなければならないのかと納得できないこともあるでしょう。しかしながら要らぬトラブルに見舞われない為にも次の点を注意して配慮する事が賢明でしょう。

 できるだけ丁寧な言葉で話す

相手との間に適度の距離感を保つために必要です。過剰反応しかねない新入社員は取扱注意の“危険物”と認識し、“危険物”を触るときの手袋として丁寧な言葉を用いるべきと考えるのです。何ができていないのかを具体的に説明する。そして侮辱と脅迫は禁物、できるだけ丁寧な言葉で話す。

 

何ができていないのかを具体的に説明する

「お前は駄目だ」と言われることに耐えられない新入社員が多いと考える。自尊心の傷つきを恐れるあまり、ちょっとした注意や叱責でも、自分への批判や非難と受け止めて過剰反応することを精神医学では「拒絶過敏性」と呼ぶそうです。このような傾向が認められる若者が増えているそうです。そういう若者に「だから、お前は駄目なんだ」などと言うと、とんでもないことになります。「お前が駄目なわけではなく、お前がやったこの仕事に問題があるのだから、直してほしい」という論法で対応するしかないのです。

 

侮辱と脅迫は禁物

当たり前だが、とくに「拒絶過敏性」の傾向を持つ新入社員を指導する場合は要注意です。侮辱は敵意をかき立てるのと、脅迫は恐怖を植えつけます。敵意と恐怖にさいなまれた新入社員は、まさに窮鼠猫を噛むのことわざ通りパワハラをでっちあげかねません。そうなれば困るのは必然的に指導する立場の上司や先輩なのです。

 

参考資料:自己愛過剰社会/ジーン・M・トウェンギ、W・キース・キャンベル