松村堂

気になることは、気にとめる事にしました。

なぜか突然辞めてしまう優秀な人材の真意

 

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 社会では、年度替わりなどに、人事移動をする企業は少なくありません。見方を変えれば、退職者が増える時期とも言えます。退職自体は、企業・個人双方にとってネガティブなことばかりではありません。当然、新入社員もいつかは成長し自分の持つ志向と会社の方針にズレが生じれば、我慢を続けるよりも別の道を歩もうと考えてもおかしくありません。確かにそのほうがお互いにとっていいことと考え行動に移す人も決して少なくないでしょう。組織としても人の入れ替わりがないと思考の停滞を招くため、一定の新陳代謝は必要だと解釈できます。しかし問題は、会社からの評価も高い優秀な社員が突然会社を辞めたいと、言い出した場合です・・・。この場合、引き止めるのはほぼ不可能と考えるべきでしょう。せいぜい退職時期を少し延長してもらう程度が関の山です。そこで今回は、そんな突然退職を言い出す優秀な社員の心理と会社の対応について考えて見たいと思います。

 

なぜ退職に至ったのかを理解する

 最初に、退職の中身について考える必要があります。社員の退職は、組織や他の社員等の職場環境を見直す格好の機会でもあります。たとえば、良い形での退職とは、前向きに雇用関係を解消する事をいいます。社員が働くうちに身に付けたスキルやキャリアをさらにレベルの高い環境で自分を試してみたいと考え円満に会社を退社するなんてのが理想でしょう。逆に悪い退職とは何かと考えれば、この会社にはもう我慢できない・・・。と一方的に退職の意思を突き付けられたような状態を指します。前述とは真逆の、とにかく今の会社に悪い印象しかなく、自分が活き活きと働いている未来を描けなくなったがゆえの悪い退社と言えます・・・。

 

優秀な人材が抜けると連鎖が始まる

 優秀な社員に恨みと不満を持たれ突然辞められるのは大きなリスクがあります・・・。なぜなら、能力の高い人材が抜けることは組織の業績にダメージを与えるだけでなく、そのしわ寄せを残った社員が被ることになるからです。更に厄介なのが、突然の優秀な人材の流出は、求人市場での価値も高く、転職先を見つけるのも比較的容易です。それにエースが抜けたことで、次々と優秀な人材が芋づる式に流出するケースも珍しくないのです。こうなると組織としては、崩壊の一途をたどるしかなくなります。

 

危険なのはまだ何とかなる状態

 危険なのは、エース級が抜けても何とかなってしまう状態です。辞めた個人の問題だった、採用時のミスマッチだったと端的な結論を出すことで、人材流出の根本原因が認識されずに組織が少しずつむしばまれて行く怖さにあります。気付いた時には、時既に遅しで完全に機能不全に陥っている事でしょう・・・。このように、悪い退職は深刻な危機の引き金になる可能性が非常に高いのです。

それにしても、会社も仕事ぶりを評価しているし、将来は組織を牽引する存在になると期待をかけたのに、なぜ優秀な社員は、当然退職すると言い出すのでしょうか・・・?

 

良い人材の流出を防ぐには

 そもそも部下の退職の兆候を上司が掴めていないという事は、相互理解ができておらず、信頼関係が構築できていない可能性が高いと言えるでしょう。部下がやりたいと思っている仕事、発言し易い環境など心理的に安全な状況を会社は、作り出す努力をしているでしょうか。また、他の社員も、どうせ言っても聞いてもらえない・・・。と、ヤル気の無い状態に陥っている人もいるかもしれません。

とにかくミーティングなどを上手く使って話す機会を作ってみてはどうでしょう。そして相互に歩み寄る質の高いコミュニケーションが取れるように努めましょう。会話のポイントとしては、仕事以外の話題で部下について知っていることがあるかどうかです。会社であれば、業務および社内でのキャリアについては当然話すでしょう。しかし個人的な志向、たとえば、最近読んだ本、プライベートの過ごし方、人生に影響を与えたエピソードなど浅くても知っておくことが、友好な関係が今以上に保てる方法だと考えられます。

 

腹を割って話をする事も必要

 当然、人間にはさまざまなタイプが存在します。人の役に立つ仕事をしたい人や、自身の信念に沿った仕事に携わりたい人、現場で職人として技術を極めたい人など・・・。個人個人のやりがいなどを普段から理解してさえいれば、仕事でのコミュニケーションも変わってきます。今携わっている業務でしかつながっていない関係は、何か問題が起きた時に突然の悪い退職が発生する可能性が出てきます。なのでその場合少しでもお互いが開示できていると心理的に安全で、質の高いコミュニケーションを取ることもできるのです。そうなるとたとえトラブルが起きても、早い段階で方向修正が可能になるのです。

 

 部下の独立を応援する

 優秀な人材だからといつまでも自分の手元に囲っておくのではなく、どこに出しても恥ずかしくないプロフェッショナルを育成することを心がける。なので会社としては、新たな部署移動や次のステージを与えるなども考えてあげる事が会社にとって長い目で見ると得策に繋がります。また、会社としても次期エースの層を厚くしておく必要があります。次期エース候補をそろえておくことで、社員を送り出したとしても磐石な体制が保持できると言う訳です。

 

最後に

 こうして考えると、良い退職は、悪い退職とは真逆の好循環を生み出す事がわかります。たとえば、あの会社でこんな経験ができた・・・。とポジティブなクチコミが広がる効果がそうです。退職者の経験談には大きな波及効果を生みます。優秀な人材が、僕はあの会社出身です・・・。と語ってくれることにはさらに意味があるのです。たとえば、あこがれの〇〇さんが育った環境ならばと、次世代の優秀人材が入社してくれるなんてこともあるかもしれません。また、退職者と良好な関係が続いていれば、将来的にビジネスパートナーとして付き合っていける事も可能です。永く良い関係を保とうとすれば、微弱な信号も受け止められるよう常にアンテナを張って置く必要があります。そしてその信号を受け取ったら素早く適切な対応に移り、人材確保に努めましょう。それにしても本当に人との接点というのは難しいものですね・・・。