松村堂

気になることは、気にとめる事にしました。

出来心が招く懲戒解雇のリスク

 

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今年、社会人になった新入社員の皆さんは、4月の入社から数えてかれこれ5ヶ月になると思います。そしてその皆さんは仕事にも慣れ、1人で行動する機会も増えている事でしょう。またそれに伴って、様々な知恵を先輩達から授かった新入社員は、営業に行ったフリをして喫茶店でサボるといった禁じ手をすでに使ってしまった人もいるのではないでしょうか。あと、親しくなった取引先などに、ついつい社内情報を話してしまったり・・・。たぶん軽い気持ちかもしれませんが、しかし現実問題そうした行動は、場合によっては、懲戒処分の対象となる場合があります。そこで今回は、会社員として絶対にやってはいけない事について考えてみました。許されると思っていても厳密には法に触れる行為もあります。

 

軽い気持ちでも刑事罰や懲戒処分の対象に

そもそも法律違反と一言で言っても、問われる責任には、刑事責任と民事責任の2つがあります。刑事責任は、罰金や懲役など具体的な刑事罰を伴う責任です。また、窃盗、恐喝、詐欺などを思い浮かべる人が多いと思います。身近なところでは交通違反などが挙げられるようです。もともと日本の法令において罪刑法定主義(ざいけいほうていしゅぎ)という憲法上の理念があります。これは、犯罪者として処罰するためには、法律によってあらかじめ罪(構成要件)と罰を明確にしておかなければならないというものです。だから刑事責任を伴う行為については、法的にやってはいけない事、という整理ができるのです。

 

こんなものでも罪は罪

たとえば、オフィスのトイレからトイレットペーパーを盗めば、刑法で、他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。と決められているので、窃盗罪にあたります。このようにやってはいけないと定めていることを構成要件というのです。刑法では構成要件に当たらないかぎりは、基本的には違法にはならないと言う訳ですね・・・。それに対して、民事責任は、一言で言えば、被った損害をお金で賠償することで、不法行為や債務不履行がそれに当たります。不法行為は、故意、または過失によって損害を与える事です。パワハラや横領などが典型的な例になります。また、債務不履行は契約で決められたことを守らないことを言います。たとえば、支払いを頼まれていたのに忘れていたとか、納期を勘違いしていて納品が遅れたなど、うっかりミスでも損害賠償請求をされる可能性があるのです。それと、職業や立場によっても、やってはいけない。は違ってきます。その典型とも言えるのが、守秘義務です。たとえば、弁護士は弁護士法で、税理士は税理士法で定められた守秘義務を負っているようですが、サラリーマンの守秘義務を定めた法律は厳密には無いようです。しかし、サラリーマンであっても法的な守秘義務を負うケースは当然あります。

 

うっかりミスでも充分損害賠償請求に値する

法律上の守秘義務はありませんが、法的な守秘義務はあります。何だかややこしいですが、そのベースとなるのはいわゆる就業規則です。就業規則は、残業や休暇など労働条件に関する部分と、組織の秩序を守るために必要なルールから構成されています。ルールを守らなかった場合には、厳重注意や譴責(けんせき)、出勤停止、解雇といった罰則があることについても規定しているのが一般的です。またサラリーマンは、入社する時に、会社に対して就業規則を守るという契約をしているのが普通です。その中に、守秘義務があれば、当然、それも守らなければなりません。就業規則としての守秘義務を守ることが、法的な守秘義務にあたる訳です。仮に違反すれば、会社の処罰の対象になりますし、場合によっては、賠償請求されることもあります。

 

守秘義務違反の刑事罰になる時とならない時

インサイダー取引に関する情報漏洩は、一般サラリーマンでも充分刑事罰の対象になることもあります。そもそもインサイダー取引とは、上場会社の関係者等が、その職務や地位により知り得た、投資者の投資判断に重大な影響を与える未公表の会社情報を利用して、自社の株式等を売買する行為の事です。そしてインサイダー取引をしていたと裁判で認定されれば、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方が科せられるのです。それに上場会社の関係者と聞くと、職位が上の人たちと考えるかもしれませんが、一般社員はもちろん、アルバイトから取引先、従業員の家族、取材で訪れた記者などさまざまな人が含まれるのです。

 

インサイダー取引の重罪度

投資者の投資判断に重大な影響を与える未公表の会社情報は、合併情報、新製品情報、不祥事、業績など、公表されれば株式等の価格に影響する情報の事を意味します。上司や同僚などと、当たり前のように交わしている話、飲み会の席で聞いた話などが、インサイダー情報にあたることもあるのです。とにかくインサイダー情報があれば、値上がりが期待できる株式等を購入して儲けたり、値下がりしそうな株式等を売却して損を避けたりできてしまうのです。一部の人だけが、このように得をすることは当然許されない事です。だからこそ厳しく規制されているのでしょう。就業規則のインサイダー取引防止規程に反する売買を行っても、必ずしも法律違反にはなりません。しかし、就業規則に反したということで、社内の罰則の対象にはなります。そして、最も注意しいのが情報漏洩です。自分は株式等の売買にかかわっていなくても、自分が漏らした情報によって売買がなされれば、インサイダー取引同様の罰則を科せられることもあるのです。取引先や友人に、社内情報を聞かれて、うっかり漏らせば、刑事罰を科せられることも充分ありうるので、話す内容は慎重に行い間違ってもSNSなどに書き込むなどしないようにしましょう。

 

領収書にまつわる詐欺罪について

日常的にやりそうなやってはいけない事の中で一番やりそうなのを考えてみました。まずは、営業担当者がウソの日報を書いてしまうパターンの場合、アポが取れなかったので行き先がない。喫茶店で時間を潰していたが、日報には数社回ったとウソを書いたなどのケースが考えられます。軽い気持ちでやってしまうと、痛い目を見ます。事実と異なることを書いているうえに、働いていないのに給与をもらっている。加えて、つじつま合わせのために行ってもいない場所の交通費をもらっていることもあるでしょう。いずれも服務規律に違反しているのと、詐欺に該当する可能性もあります。理屈でいえば、1回のウソで懲戒処分になっても仕方がないのです。それほど重大な服務規律の違反になるのです。

 

様々な服務規律違反

チョッとした経費をごまかす、という話を聞いたことのある新人もいるかもしれません。たとえば、喫茶店代や飲み代。同僚、あるいは友人知人などと利用しただけなのに、取引先との打ち合わせや接待の偽装をする。 安い電車代のルートで出掛けたのに、高い電車代のルートを使った偽装をする。プライベートで購入した本の代金を資料と偽って請求する。こうしたケースは、いずれも厳密には横領や詐欺に該当します。領収書下さい。と頼むと、ときどき出てくる白紙の領収書があります。あれを使うとどうなると思いますか? まず、白紙の領収書に、自分で数字を書き込めば文書偽造に該当する可能性があります。もし、違う価格を書いて、それを経理などに回せば、横領や詐欺に該当することにもなります。また、発行した側、もらった側ともに税法違反の問題がでてきます。中でも日常的にお金を扱う仕事についている人は、より罰則が厳しくなるでしょう・・・。

 

最後に

額が小さくても、仮に周りのみんなが、やっていたとしても就業規則違反は自分だけでも止めましょう。場合によっては充分犯罪にもなります。つまらない不正で懲戒解雇になったら最悪です。もう目も当てられません。親が泣き、家族が悲しみます。いずれにしても、やってはいけないことのリスクは、やったことに見合わないほど高いことを認識すべきでしょう。取り合えず、就業規則に目を通して、社会人としての自覚を高めておきたいものですね。