松村堂

気になることは、気にとめる事にしました。

有給休暇義務化に潜む怪しい会社の怪しい動き

 

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 いよいよ4月から有給休暇が義務化されることになりました。年間10日以上の有休があるすべての労働者は、これから会社側が最低5日の有休を消化させなければならないのです。そして対象となるのは正社員だけではないのです。次の条件を満たした契約社員をはじめパートさんやアルバイトさんも含まれるそうです。そこで今回は、知ってるようでよく知らない有給休暇が義務化について予習したいと思います。因みに以下の条件が満たされている人もその権利がある人なのです。

  • 入社後6か月が経過している「正社員」またはフルタイムの「契約社員」
  • 入社後6か月が経過している週30時間以上勤務の「パート・アルバイト」
  • 入社後3年半以上経過している週4日出勤の「パート・アルバイト」
  • 入社後5年半以上経過している週3日出勤の「パート・アルバイト」

但し出勤率が8割以上の人が対象との事です。

 

働き方改革関連法案のなせる業

 誰もが知ってのとおり昨年可決された「働き方改革関連法案」によって労働基準法の一部が改正された中で、守らない会社は違法行為になり刑事罰が与えられることになるというとても厳しい法案です。条件を満たす正社員もアルバイトも最低5日間の有休取得が義務化されるとなれば、労働者にとってはとても喜ばしい事のはずなのですが不思議と話題になっていないのが少々気になるところです。

 

意外と知らない有休の取得義務化の全貌

 昨年10月に、転職サービス関係の会社が、有休取得義務化についての調査を行ったところ、転職を希望する20代から40代の男女約500人に有休取得義務化を、知っていますかの質問をしてみたところ、過半数が知らないと回答したそうです。そもそも施行まで半年もないのに認知度が半数を下回っていたということは、いかに関心が無いかが解かります・・・。

一方、日本商工会議所は全国の中小企業2881社を対象に「有休取得義務化」をはじめとする法改正の準備状況などを調査し今年1月に結果を発表したそうです。その中で、法改正の内容や施行時期を知らないと回答したのは、従業員100人以下・50人以下の企業でも約3割を占めることが判明しました・・・。今回の法改正は労使ともにどうやら関心がいまいちのようですね。

 

有休取得義務化に対しての注意点とは

 まずは、パートやアルバイトは影響大の可能性についてです。そもそも有休取得義務化で会社は、ダメージを受けないのでしょうか?これまで有給休暇をあまりとらない労働者がいる職場では、恐らく相当な影響があると考えられます。というのも、この義務は、職場の平均ではなく、1名の労働者でも5日間の有給休暇を取らせていなければ違反となるからです。どんなに優良な職場であっても1名でも5日未満しか有給休暇を取得していない労働者がいればそれは違反になるからなのです。特にアルバイトやパート労働者を多く雇っている飲食店や、小売店は、これまでアルバイトやパート労働者が有給休暇を使ってなかった事が容易に推測されます。そうなると当然大きな影響がでるのは必然です。

 

学生のアルバイトも有休が義務化が適用

 正社員に限らず、アルバイトでもパート労働者でも、10日間の有給休暇が付与される労働者が対象となります。毎年夏休みが1週間あるような会社はあまり影響がないかもしれません。もしくは、夏休みやその他の休暇を、労基法上の年次有給休暇としている職場でも影響は少ないでしょう。しかし別の休暇制度で夏休みなどの休暇を与えている場合は、年次有給休暇の消化にならないため影響が出るでしょう。

今回の法改正で取得が義務化されるのは、年間10日以上の有休が与えられる労働者が対象ですが、そもそも有休自体は、週1日勤務のアルバイトでも6か月以上勤務すれば取得することができるということです。これがフルタイムの正社員・契約社員か、週30時間以上勤務のパート・アルバイトの場合であれば、有休は6か月勤務で10日発生となります。それより所定労働日数が少ないパート・アルバイトは、働いた日数に応じて有休が取得できます。

 

日本の有休取得率は世界最低レベル

 厚生労働省が2018年に行った有給休暇の取得率調査によると、1年間に民間企業の労働者に与えられた有休は1人あたり平均18.2日だったそうです。そして実際に取得したのは約半分に留まっているのが現状です。それでも有給休暇取得率(取得した日数の割合)は3年連続で上昇しており、2018年の51.1%は1998年以来20年ぶりの高水準となっています。ところで、おととし発表された世界の国別取得率と比べると日本は最下位という状況です。ただ、何が根拠か分かりませんが政府は2020年までに、年次有給休暇の取得率を70%にすることを目標に掲げているようです。

 

罪と罰

 たとえば、従業員に有休を取らせなかった会社はどんな罪になるでしょうか?それは、使用者(雇用主)に30万円以下の罰金が科せられる事になります。対して労働者には刑事罰はありません。労働者1名の違反につき「一罪」が成立するので、罰金はどんどん加算されていきます。仮に、100名の労働者について違反があれば、罰金の最大額は3000万円と言う訳ですね・・・。

 

経営側が新たにしなければいけないこと

 経営側は、労働者の有給取得状況に目を光らせる必要があります。法律でも、有給休暇管理簿の作成を義務付けられました。こうした管理簿を使用して、労働者に有給休暇を取るように促したり、有給休暇の時季を指定していく必要があります。また、経営側が一方的に有給休暇の時季を指定すると従業員からの反発が起きるかもしれませんので、極力労働者の希望を聴いて、それを尊重するよう努力する必要があるのです。

 

従業員側がしたほうがいいこと

 従業員側は、有給休暇を取得するだけなので、特別な準備は要りません。ただ、職場に有給休暇を取得しにくい雰囲気があるような場合は、法改正を機に変えていった方が絶対にいいでしょう。現実問題として殆どの職場で、有休を取ることためらいを感じる人はかなり多いと考えられます。もちろん会社側は、有休を取る労働者に対して不利益となる取扱いをしてはならないのですが、従業員の人達は様々な理由でためらっていることが考えられます。おまけに有休が義務化されるといっても、ブラック企業にとっては無縁の話ですからね・・・。

 

ブラック企業の手口に要注意

 ブラック企業など、義務化をごまかす手口はそれなりにあるでしょう。たとえば、正月休みなど、既にある休暇を有給休暇にすり替える手口などがそうです。仮に、今までは年次有給休暇とは別に夏季休暇を与えていたのに、その日を年次有給休暇に変えることで、義務となる5日を消化させるようなやり方の事です。そしてこれは、明らかに労働条件の不利益変更となります。この不利益変更自体に刑罰はありませんが、民事上その不利益変更が無効となった場合は、有給休暇を5日与える義務を果たしていないことになり、刑事罰を科せられます。他にも、これまで休日だったところを労働日に変更し、そこに有給休暇を充てるやり方もあり、同様に不利益変更となります。

 

有給が取れなかったら労働基準監督署に相談する

 有給が取れない場合、労働基準監督署に相談してみましょう。なにせ労働基準監督署がこの手の権限をもっていますからね・・・。そもそも労働基準監督官は、労働基準法については司法警察員(警察官や麻薬取締官など、捜査や逮捕などを行う資格のある公務員)と同じ立場にあるからです。

 

なぜ有休取得義務化の認知度が低いのか

 労働者はともかく、企業の認知度が低いのは問題です。理由としては、やはり有給休暇に対する意識が低い企業や労働者が多いからでしょう。なので取得率の低さ=認知度の低さに反映されているものと推測されます。企業側ものん気にしていると、そのうち違反となって刑事罰を受けるかもしれません。なので早急に制度を勉強するべきでしょう。

 

最後に

 考えるに日本での有給休暇の取得率が低い原因は、恐らくみんなが働いているときに自分だけ休むのはチョッと気が引ける・・・。というわけの解からない罪悪感が原因だと思います。しかしこれは日本特有の国民性という背景があるので、そう簡単に変わらないでしょう。ただ、どの道この法改正は、5日は強制的に有給休暇を取らせるというものですので、遅かれ早かれ淘汰されていくものだと思います。僕の勤めている会社も4月から定休日が5回から6回に増えます。休みが増えることは、嬉しいのですが、反面お金も無駄に使いそうなので若干今からビビッています。