独り言は セルフコントロールの一部
人は誰でも相手がいないのにもかかわらず、ブツブツと独り言の一つや二つ日常的に呟いていると思います。はたから見ると薄気味悪いと感じる人もいるかもしれませんが、ごく普通の人間の仕草なのです。そもそも独り言（ひとりごと）とは、会話の相手が存在しないにもかかわらず、発声を伴う言語を口にする行為、及びつぶやかれる「ことば」だとされています。一人言とも表記し、独語（どくご）、独言（どくげん）、独話（どくわ）ともいうそうです。最初でも触れましたが、周囲からは「変な人」と見られるかもしれません。電車の中のような公共の場であれば、なおさらその感は強くなるでしょう。そうした反面「独り言」は心理的に意味のある行動だと言えるのです･･･。そこで今回は、そんな独り言についてジックリ
独話と対話の使い分け方と意味
発声を伴う「話しことば」は、一般に聞き手に向かって発せられるものです。友人と談話をする、インタビューをするなど、声（ことば）によってコミュニケーションを図ることを「対話」と呼びます。これに対し、相手がいないのに声を伴うコトバを発する行為が「独り言（独話）です。独言・独白・呟きなども類語で、私語や捨て台詞も含まれるという見解もあります。心理学では、ことばが声となり伝達ツールとして使われるときは「外言（がいげん）」と呼ぶそうです。
これに対して、音声を伴わない思考、いわゆる頭の中で展開されるときは「内言（ないげん）」と呼びます。この区分からすると、内言が声となって発せられるのが「モノローグ」とも言えるでしょう。また、演劇や舞台などではモノローグも一つの表現方法になっています･･･。
一般的に言う危ない独り言とは
しかしながら、なかには危ない独り言も存在するのも事実です。たとえば、日常生活で話し相手がいなくて仕方なく独りでブツブツしゃべっている場合。あるいは、ストレスが昂じて気がつかないうちに心に溜まった不満ややるせなさをコトバにして呟いていた場合など、孤独やストレスが独り言を呟かせるそうです。
また、ある種の精神疾患の症状として「独り言」が出ることもあると言います。たとえば、統合失調症の幻覚や妄想によって、本人がリアクションとしてコトバを発している場合がそうです。また、自閉症スペクトラム障害も比較的独り言が多いと専門医は指摘しているそうです。このように、疾病の症状としての独り言も、前述の孤独やストレスの場合と同様、精神的な危機や緊張、興奮によって「独り言」を発しているという観点から「危ない独り言」と捉えられているそうです。特に日本では、人中で独り言をしゃべっていると「変な人」と思われやすいふしがあります。従って独り言は、好ましくないネガティブな状態、と判断される傾向にあるようです。
アスリートの独り言
アスリートが出番直前、自分を励ましたり勇気づけたりするために、独り言を発することがあります。これは「自己対話」と呼ばれます。アスリート以外にも、本番直前の歌手やプレゼン直前の発表者などが、こうした独り言を発することがあります。頑張ろうという様子が伝わってきて、好感と共感をもって支持される行為と言えるでしょう。この場合の独り言はポジティブなイメージで捉えられています。
独り言の役割とは
周囲の目に配慮する伝統的な日本文化よりも、自分が何をやりたいかという自己実現を尊重する欧米型の文化において、自己対話はよりポジティブなものと評されているようです。たとえば、アメリカ合衆国では精神科医や臨床心理士たちによって、セルフトークのメリットとして次のような点が挙げられています。独り言で集中力が高まる。作業中に声を出すことで雑念を追い払って考えがまとまり、集中力も高まる。
目標の達成を促す
声に出して目標を表明すると、
実際に最後までやり遂げる可能性が高まる。
いわば自分を鼓舞する（奮い立たせる、励ます）ことにあたる。
心の準備をする
面接やプレゼンに向けて、
声に出して予行演習をしていることが
周囲には独り言に見える。
もちろん、
本人にとっては準備そして
シミュレーションの役割を果たす。
パニックモードを防ぐ
セルフトークにより
ストレスレベルが下がることが
専門家の医師によって指摘されている。
ストレス解消
いわゆる内に溜めておかないで
コトバにすることでストレスを解消し、
不満や怒りなどのガス抜きをする･･･。
その手段としての独り言
心の支え
葛藤や喪失や病気など、
落ち込んでいたり心が痛んでいたりする時、
自分を自分で慰めることで癒される方法として用いる
最後に
しかし、現代の日本社会は、孤独病、無縁社会などの言葉に象徴されるように、孤独な生活や人生を余儀なくされる人が増えてきています。独り言が持つポジティブな面を評価して、少しでも豊かなこころで生きるために活用しようと考えてもよいのではないでしょうか。そしてひとつ言えるのは、独り言には世間や他人への悪口、不満といったネガティブな独り言と、自分を励ますことや楽しいイメージを表現するためのポジティブな独り言がありますが、周囲がそれを「変なもの」として見るか、「共感的」に受け止めるかは、その内容によるということでしょうね･･･。
参考資料：株式会社とらうべ
