松村堂

気になることは、気にとめる事にしました。

会社を辞める場合の基礎知識

 

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 最近、テレビで見てビックリしたのが「退職代行」という仕事です。一般的に退社する時には、当たり前のハードルいわゆる「退職願を提出してもなかなか会社を辞めさせてくれない」とか「上司に退職の話をするのが気まずくて、話を切り出せない」などがあると思います。ま~それでも自分の将来がかかっているので嫌でも何でも自分で言うのが筋でしょう。しかし当事者にとっては相当深刻な理由からなのか実際に会社を退職できずに困っている人がそれなりに存在しているようです・・・。そしてそんな依頼者に代わって、退職手続きを代行してくれるというサービスがあると言うからこれまた驚きです。

 

転職の正しい方法を身に付ける

 転職市場が賑わっている中、今の会社を辞めたいという人はそれだけ増えているのかもしれません。もちろん、「退職代行」を利用するかどうかは本人次第ですけどね・・・。ところで、実際に退職する場合、法的に退職するにあたってのルールがどうなっているのか僕もそうですが、労働者も会社の人事担当者も当然理解しておく必要があります。そこで今回は、改めて知っておきたい退職に関する法的なルールを調べて見る事にしました。

 

申し出れば最短2週間で退職できる

 これから転職するに当たり当然理解しておかなければいけないことは、会社によって社内のルールはさまざまであるということです。しかし一応どの会社にも国から定められた一定のルールというものがあります。いわゆる労働基準法(労基法)です。因みにその労働基準法(労基法)では、労働者が10人以上いれば、会社として、就業規則の作成が義務付けられています。そして就業規則には、労働者にとって重要な労働時間をはじめ、休日、休暇などさまざまなルールが定められています。その内容は前述した通り会社によって、それぞれ異なります。

もちろん、労働者が退職する際のルールも異なります。たとえば、退職は2週間前までに申し出ることで退職できる会社もあれば、退職は必ず3カ月前に申し出て、会社の承認を得なければならないと厳しめに規定している会社もあります。いずれにしても、法的なルールをきちんと押さえておく必要があるわけです。因みに労働条件の最低基準を定める労基法では、残念ながら労働者から退職する場合の取り扱いについて、ほとんど規定されていないのが現状です・・・。なので、退職のルールは今のところ民法で規定されてるようです。

 

会社の規則より確実に民法が優先する

 民法では、雇用契約期間の有無で取り扱いが異なります。正社員のように雇用契約期間の定めがない場合は、「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申し入れの日から2週間を経過することによって終了する」と民法(民法627条1項)で定められています。これは民法のルール、つまり法律になる為、たとえ就業規則や個別の雇用契約書で退職は1カ月や3カ月前までに申し出なければならないと定めていた場合であっても、法律である民法のルールが最終的には優先されることになります。

その為、法的には、退職の意思表示を会社にきちんと伝えれば、最短で2週間後に自動的に退職という扱いになる訳です。因みに、雇用側が「1カ月前までに申し出ること」をルールとして定めておくこと自体は法令違反ではありません。そういえば、僕の会社が取り扱う海外ブランドであるメーカーの社員も2週間で退職した人が、いたので間違いありません。

 

契約期間の定めがある場合は要注意

 パートやアルバイトなど雇用契約期間に定めがある場合は、注意が必要です。雇用契約期間が定められている場合は、会社と労働者がその期間はお互いに合意した労働条件で働く、働かせることを約束しているので、「やむを得ない事由」がなければ原則、雇用契約期間の途中で退職することはできない取り扱いになっています(民法628条)。つまり、雇用契約期間の定めがない正社員より厳しいルールになっているのです。

 

強引に辞めた場合の賠償請求について

 因みに、やむを得なく辞める場合、程度は明確にされていませんが、育児や介護といった家庭の事情や長時間残業やハラスメントなどの理由は勿論のこと、ある程度緩やかに判断されます。しかし、やむを得ない事由もなく、会社が合意してくれない場合に退職すると損害賠償を請求される可能性があるそうです・・・。たとえば、重要なプロジェクトの主要なメンバーになっている等の場合それにあたります。

但し、労基法137条では、「契約期間の定めがある場合でも契約期間の初日から1年経てば、労働者は自分の意思で自由に退職することができる」と定めている為、雇用契約期間の定めがある場合でも1年過ぎれば、自由に退職できることになるのです。

 

退職願と退職届の違いを理解する

 労働者が退職の意思表示をする際、一般的には「退職願」と「退職届」があります。漢字が1文字違うだけですが、その意味合いは異なると考えられています。「退職願」は、あくまでも労働者が退職を希望する旨を願い出る書類になるので、会社の人事権がある上司の承認があってはじめて退職という事になります。つまり、合意解約の申し入れの書類という事です。その為、「退職願」を提出した後も、会社が承認するまでの間は原則として撤回できることになります。

一方、「退職届」は、労働者からの一方的な退職の申し入れの書類になるので、会社の承認を必要としません。つまり、退職届を人事権のある上司に提出した段階で効力が生じる事になるのです。その為、提出後は自分の中で心変わりしても原則撤回もできないという事になります。したがって、退職願を出してもなかなか辞めさせてくれないといった場合は、書式を退職届に替え、退職の意思が固いことを伝える方法もあります。

 

承認の無い退職は損害賠償を請求されるのか

 いわゆるブラック企業といわれる会社では、就業規則や雇用契約書で、仮に「会社の承認を受けずに退職した場合は損害賠償を請求する」といった定めが有ったとしても、前述の通り、雇用契約期間の途中でプロジェクトの主要なメンバーだったようなケースでなければ、損害賠償請求が有効になることは無いでしょう。そもそも、憲法では、職業選択の自由が保障されており、労基法16条でも労働者が退職するにあたって、違約金や損害賠償を請求することを契約とするのを禁止しています。その為、そのような規定が雇用契約書や就業規則に存在した場合でも、無効と判断されるので、問題ありません。

 

最後に

 上記のように法律をきちんと理解してさえいれば退職はいつでもできます。あと、冒頭に上げた退職代行については、本人が会社と直接やり取りせず、また会社に行かなくても退職できるのは、確かに本人にとっては、便利なサービスかも知れません。しかしながら、会社と直接話さずに辞めるだけに円満退職とは、正直なり難いような気もしますし、何よりコストが掛かりますしね・・・。いずれにしても、退職する時は「立つ鳥跡を濁さず」です。法律をきちんと理解し、残されたスタッフに迷惑がかからないように退職するのがベストだと思います。