松村堂

気になることは、気にとめる事にしました。

今時の若い者の事は古い者には分からない

 

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 売り手市場が未だ続く現在、転職が活発化しているこんにちにおいても、早期離職をする若手はやはり根性がない・・・。といった感覚は少なからずともどの職場でも存在すしています。たとえば、新卒入社した若手が短期間で離職すると、今時の若者はすぐ会社を辞めてしまう・・・。と不満を募らせたり、離職の要因をゆとり教育が職業意識を変えたなどと結論付けたりする人もいるでしょう。そこで今回は、本当に今時の若者がダメなのか、それとも時代のスピードについてこれず、新しいものを否定しアップデートされていない自分の物差しで計り続ける人が悪いのか、を色々と考えて見たいと思います。

 

「すぐ辞める=今時の若い奴」を見直す

 上記のような、早期離職する若手を根性がないゆとりの申し子扱いするのは、現代社会では、少々問題のある発言になります。仮にそうした欠点が若手にあるなら、早期離職した若手はどの会社からも拾われず失業してもおかしくないでしょう。しかし現実は決してそんなことはなく、ほとんどの人が転職できているのが現状です。要するに若手の資質や根気に問題があるわけではないという事です。

 ある調査によると、若手の早期転職経験がある人の退職理由は、仕事内容への不満が半分以上占めていました。その次に来るのが、人間関係への不満だったそうです。あとは、若手に限らずよくある問題ばかりが取りざたされていました。たとえば、賃金への不満、社内ルールや常識、上司の能力と資質、それに会社の事業方針やビジョンなどが入社前の予想を下回っていたというのが離職への起爆剤になっているようです。

 

若手早期退職者の転職後と満足度

 仕事内容や人間関係などの環境さえ合えば、多少待遇が悪かったり勤務先の知名度が下がったりしても、若手は不満を持たず前向きに働けることができます。厚生労働省が発表している「新規学卒者の離職状況」調査では、大卒者の3割が入社から3年以内に離職する・・・。という3年3割の法則が約30年間ほとんど変わっていないそうです。したがって若手の根気うんぬんではなく、日本の就職活動の仕組みが少し前から新しい段階に入って来たと言う事です。自分にマッチングした仕事を拓かれた転職環境で見つけることができれば、今の若者もダイヤの原石として大いに社会で力を発揮できるという事です。

 

日本の就職活動のウィークポイントとは

 日本では海外に比べ長期のインターンシップが普及しておらず、学生が在学中に、アルバイトなどではなく本格的な就労経験を積むことができない為、就業の実態を経験できないまま入社せざるを得ないことが問題かもしれません。学生はわずかなインターンで得た経験や、会社説明会やOB・OGの聞いた話、メディアの報道を通じて得た企業の情報に基づいて就職先を決めるしかない為、実際にいざ働き出して実態を知ると見聞きしたことと違うと感じ、いきなり戦意喪失となるケースがでてくるのです・・・。こうした入社後のギャップを防ぐ取り組みは海外の方が進んでいるようです。海外では、大学を卒業した若手が、トレーニングプログラムと呼ばれる長期の就労体験に参加できるような仕組みもあるそうです。参加者は企業で実務経験を積めるほか、各部門を数カ月おきに異動しながら適職を探し、「よし、この分野で働きたい・・・。」と納得した段階で応募できるというメリットがあります。

 

日本企業の問題点

 日本企業の採用と配属方法の課題として気になるのが、職種別採用ではなく、職種を限定しないで採用する企業が多く存在する事です。就活生は職種を選択できない状態で就職先を決めざるを得なくなりその為、入社後に希望が受け入れられず、経理をやりたかったのに営業に配属されたり、労働環境や人間関係が悪い部署に配属されたりと、想定外の事態に陥るのが今時の若手が転職を決めるファクターのひとつかもしれません。

 

早期離職する若者が批判される理由

 高度経済成長期は年功序列・終身雇用が当たり前で、同じ商品やサービスを継続的に出すだけで収益が生まれていた時代でもありました。いわば出せば売れる状況で、ビジネスモデルを変える必要もなかったため、会社員は同じ環境で働き続けることで習熟すると考えられていたと思います。それにその当時は、若い頃に活躍するチャンスが例え巡ってこなくても、10年ほど我慢すればそれなりに良いポジションに就けるなんてのも当たり前の時代でしたので、早期離職する若手が批判される理由としては、こうした時代のギャップが先輩達の凝り固まった思考回路に偏見を生み、必然的に「今時の若いもんは・・・。」となるのかもしれませんね・・・。

 

最後に

 これからの転職市場については、まだ当分は売り手市場が続き、求人数が極端に下がる事はないでしょう。離職した人達の転職先という受け皿がそろっている今の状況下で各企業も、なんとか新卒入社した若手を繋ぎとめる必要があるため、危機感を感じている企業側はそれなりに必死になって抱え込みに奮闘してくることでしょう。その一方で、雇ってあげるというマウンティングな思考を持ち努力を怠った企業からは、優秀な若手がどんどん去り、他社への流出となります。間も無く平成が終わろうとしている時代に、終身雇用や年功序列が当然だった先輩達の価値観のもと、成長を求めて転職する若手を「今時の若いもんは・・・。」と否定するのは、もう時代遅れだと素直に認めたほうがどうやら良さそうですね・・・。